a 亡Aに生じた精神障害及びその発病時期について M医師,専門部会及びT医師の意見を総合すると,ストレス関連障 害,何らかの精神障害,精神的変調の発症時期は平成9年4月ないし 7月であり,うつ病は同年8月ないし11月の間に発症あるいは診断 できると判断していることになる。
上記各医師の意見を基に,N医師が分析したところによれば,平成 9年3月下旬に「睡眠障害」といった精神疾患が発症し,同年8月に は「集中力・判断力低下・思考停止」に至り,この時点でうつ病と確 定診断できるもので,上記各医師の意見とも矛盾はない。
同疾病は, その後も徐々に症状が進行し,同年10月には症状が重篤化したもの と考えられる。
なお,原告は,亡Aの全身倦怠感(平成8年11月19日)につい て内科疾患(中でも肝機能障害)に基づくものではないとし,かかる 疾患が精神的負担によるものだと主張するが,亡Aについては,平成 5年から9年までの健康診断の結果,毎年肝機能障害が指摘されてお り,特にZTT値に異常が認められている。
また,西部病院で実施さ れた血液検査においても,平成5年及び平成8年の検査結果において, 肝機能検査項目のTTT値とZTT値に異常が認められている。
した がって,上記全身倦怠感については,肝機能障害によるものと考えら れる。
b 本件における出来事の評価期間について
判断指針によれば,業務の過重性にかかる評価の期間は,うつ病発 症前のおおむね6か月であるから,平成9年2月ころから同年8月こ ろまでの間に,客観的に当該精神障害を発病させるおそれのある業務 による強い心理的負荷が認められるときに業務起因性が肯定されるこ とになる。
c 本件における精神障害発病後の業務,出来事について
亡Aのうつ病の発病は,平成9年8月ころであり,同発病後自殺に 至るまでの間に治癒したことはないものと認められる。
そうだとすれ ば,本件においては,業務起因性を検討するに当たり,いったん精神 障害を発病した後である同年9月以降の業務,出来事による心理的負 荷が認められるかどうかを検討する必要がないことになる。
うつ病発 病後には,通常とは異なる心理的負担感をうつ病の症状として呈する ことが避け難く,それをうつ病発生の原因となった業務上の心理的負 荷と解することには無理がある。

このページの先頭へ